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使命の新天地、札幌医科大学で過ごした14年間
https://doi.org/10.15114/smj.90.11
https://doi.org/10.15114/smj.90.11a4c00117-8fe8-443a-918c-cf109002bef6
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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0036472X90111.pdf (27.4 MB)
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Item type | 紀要論文 / Departmental Bulletin Paper(1) | |||||
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公開日 | 2022-03-18 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 使命の新天地、札幌医科大学で過ごした14年間 | |||||
言語 | ja | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_6501 | |||||
資源タイプ | departmental bulletin paper | |||||
ID登録 | ||||||
ID登録 | 10.15114/smj.90.11 | |||||
ID登録タイプ | JaLC | |||||
著者 |
藤宮, 峯子
× 藤宮, 峯子 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 札幌医大に赴任して以来、この14年間は本当に幸せな年月でした。2008年3月に教授選考のセミナーの為に札幌を訪れた時、飛行機が新千歳空港に差し掛かった時に見た、空の青さと銀色に輝く雪原との美しいコントラストが今もよみがえってきます。まだ、教授に選ばれてもいないのに、「ここが私の使命の新天地だ」との思いが心の底から湧いてきました。この思いはそれから14 年間、変わらず続いており、むしろ北海道を愛する気持ちは益々強くなっています。着任当時、札幌医大において医学部初の女性教授だったこともあって、「関西弁を喋る元気な女性教授」として学内外の方々から珍しがられ、可愛がって頂きました。最初の4年間は、「ディスカバー北海道」の為に、多くの方々と交流し、北海道で生きる為の流儀を学びました。そのように外向きに生きていた私は、2012年以降は、あることをきっかけに180 度生き方を変えることになりました。そのきっかけの一つは、大学近くの南1条通りを歩いていて、附属病院の駐車場に入る車が長蛇の列を作っているのを見た時です。この辺りは病院がひしめいているのですが、どの病院も患者で溢れているのは一体どう言うことなのか?私が大学院生の時、世界中で癌研究が活発に行われており、「30年後にはこの世から癌がなくなる」と、明るい希望に燃えていました。それから30年。癌は無くなるどころか、どんどん増え続け、今や国民の2人に1人が癌にかかり、3人に1人は癌で死ぬ時代です。これは必ずしも国民が高齢化した事だけが原因ではなさそうです。事実、30歳台~40歳台の乳癌患者が激増している事からも明らかです。また、うつ病や自己免疫疾患、その他の難病も増え続けています。「一体、医学研究者として自分は何をやってきたのか?」「何のために研究をすべきなのか?」と、強い自省の念が湧き上がってきました。これをきっかけに、それまでの外向きの生き方を一切止め、研究者としての本分にのめり込む事にしました。研究テーマとして掲げたのは、「再生医療」と「人間蘇生医療」です。「再生医療」は、滋賀医大での研究で導き出した「骨髄細胞の異常が糖尿病で起こる多臓器障害を引き起こす」と言う理論を、実際の医療に応用する事です。幸い、幾つかの企業から研究費を頂き、さらに、2017年には道内4企業から出資して頂き、「糖尿病性腎症の再生医療」の開発を進める為にベンチャー企業を設立することが出来ました。設立後5年間で、アカデミアとしてやるべき事は全て完了し、今後は企業に事業化を委ねています。もう一つのテーマの「人間蘇生医療」については、疾患が増え続ける背景にある「何故、病気になるのか?」と言う根本的な問題を解明し、病気にならないようにする事が目標です。癌、うつ病、認知症、その他の難病を未然に予防する事が出来れば、年間44兆円にも達する医療費の削減が可能となり、何より国民のQOLを高める事が出来ると言う点で、貢献度は大きいと考えます。この「人間蘇生医療」の研究のために、「そもそも、生命力=自己治癒力とは何か」を突き止める必要があります。その為に、私が用いた方法は、電子顕微鏡観察です。研究を始めた当初、「1mm角の電顕サンプルから生命のダイナミズムに迫る」と意気込んでいたのですが、周囲は白けた顔でした。しかし、それから280日にわたって電顕室に通い続け、2 万枚の電顕写真を元に編み出した独自の理論を講座のセミナーで披露し始めると、やっと私の本気度が周囲に伝わったようです。結局、電顕観察から作り上げた理論を、一つ一つ大学院生が実験室で証明してくれ、論文がジャーナルのトップ・サイテーションを記録したり、国際学会から次々と招聘状が届いたりすると、「電顕と言う旧式の方法を使って、最先端の医学研究が出来ている」喜びを密かに噛み締めていました。この理論をまとめた『「生命の海」と「人間蘇生の医学」』と言うタイトルの本が、近々出版されます。是非、読んで頂きたいと思います。さて、このように、使命の新天地でのびのびと楽しく独自の学問を追求することが出来たのも、大学の中で多くの方々に暖かく支えて頂いたお陰です。また、教育研究機器センター所長や、動物実験施設部部長、標本館長を拝命しましたが、各部署で、大学の発展の為に熱心に働いておられる職員の方々と温かい交流が出来た事は、最高の喜びです。就任当初、解剖学第2 講座のスタッフに、「今から航海が始まりますが、私はキャプテンとして、双眼鏡で航路を見定める役目です。皆様はそれぞれの持ち場を守り、この船が正しい方向、つまり大学の発展と人類への貢献と言う目的地に向かって進めるように、宜しくお願いします。」と、述べました。私は、間もなくキャプテンの椅子から降ります。しかし、解剖学第2講座号は、大学のさらなる発展に寄与する為に、これからも航海が続きます。これまで、本当にありがとう。良き航海を! Bon Voyage! | |||||
書誌情報 |
札幌医学雑誌=The Sapporo Medical Journal en : The Sapporo Medical Journal 巻 90, 号 1-6, p. 11-21, 発行日 2022-03-31 |
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ISSN | ||||||
収録物識別子タイプ | ISSN | |||||
収録物識別子 | 0036-472X | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | VoR | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 | |||||
出版者 | ||||||
出版者 | 札幌医科大学 |